◆9月16日 14時のエピソード/Aルート――――
(どこだ!? 先生はどこに
行ったんだ!?)
渡瀬は、闇雲にラボ内を走り回り――
やがてある連絡通路に差しかかり、
足を止めた。
(ここは……?)
そこは恵那と初めて出会った、
あの連絡通路だった。
通路の奥に、曲がり角がある。
(あの時は、そこを曲がると、
先生がいたんだ……!)
ほんの数時間前の記憶。だがなぜか
その事が、不安をさらにかきたてた。
口の中がからからに乾いている。
渡瀬は生唾を飲み込むと、
ゆっくりと通路を進んだ。
そして、曲り角の向こうを覗き――
「ッ――!」
渡瀬は眼を見開いた。
そこに恵那が、倒れていたからだ。
「先生!」
駆け寄り、慌てて恵那を助け起こす。
すると――
恵那の首が、だらりと力なく
垂れ下がった。
「……あ」
彼女の体は、まだ温かった。
その首に触れてみる。
――脈動が一切ない。
瞳孔を覗き込む。――散大している。
自分の手首のメディカルチェッカーを外し、
恵那の手首に巻く。
――5つの光が、全て赤くなる。
彼女の額には銃創があり、
それが後頭部まで抜けていて――……
それ以上確認するまでもなかった。
恵那は――もう、死んでいた。
「……」
渡瀬は言葉を失った。
やがて胸の奥から、声が絞り出される。
「……ぅ…ぁ…。
……ぅぉああ……。
……あああああっ!
なんでだ! なんでだよ!
なんで先生が、死んでるんだよッ!!」
その問いに答えるものはいない。
恵那は光を失った眼で、虚空を見ている。
「……なんで……。
…………。
……先生……ッ!」
渡瀬は恵那の亡骸を抱きしめた。
その体から、少しずつ、温もりが
失われていくのがわかった……。
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