◆9月16日 13時のエピソード/Aルート――――
――だが、その時。
渡瀬の背筋が、ぞくりと震えた。
「……っ」
非常階段の下の暗がり。
登る時には注意して見なかった死角。
――そこに何かが、いる気がしたのだ。
「……誰だ」
鼓動が急速に早くなる。
「誰だ!」
それは床に伏せているようだった。
「……!?」
恐る恐る、渡瀬が階段の
陰をのぞき込んだ時――
そこには、信じられないものがあった。
「……そんな」
渡瀬の口から、虚ろな声が漏れる。
崩れた非常階段の瓦礫の中。
そこに倒れている小さな体。
光を失った眼。
それが渡瀬を見据えている。
「……ユウリ!?」
渡瀬はそれに駆け寄った。
先ほど感じた恐怖心などは、
一瞬で消えてなくなっていた。
「ユウリ! ユウリ!」
叫んでも彼女は、微動だにしなかった。
瞳孔の開き切った眼が、
ぽっかりと虚空を映している。
呼吸をしていない。身体が冷たくなっている。
それは紛れもなく――ユウリの、死体だった。
「バカな……どうして……!」
「どうして、こんなことに……!?」
その問いに答える者はいない。
あの時の言葉の意味も、恐怖感の正体も、
何もかもわからないまま――
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