◆9月16日 14時のエピソード/Aルート――――
そして第1エリアへ繋がる連絡通路に
差しかかった時――
前方から奇妙な音が聞こえてきた。
「……何の音だ?」
息を殺し、通路の角から、
向こう側を覗き込んだ。
(守部!?)
10mほど向こうに、エンジンカッターを
持った洵がいた。
なぜか頭から血を流しながら、
ぶつぶつと何か呟いている。
「あいつ……いったいどこに……?
そうだ……やっぱり、そうなんだよ……。
だったら……もう、仕方ない……。
そうしなきゃみんなを護れない……
あたしが、あいつを殺さなきゃ……。
辛くても、頑張らなきゃ……!」
虚空に向かって話すように、
洵は呪いの言葉を吐いていた。
それを聞いて、渡瀬は戦慄する。
(あいつって……オレのことか!?)
どう考えても異常だが、
宇喜多に命を狙われたばかりの渡瀬には、
もはやそうとしか思えない。
渡瀬は振り返り、風見に耳打ちした。
「まずい、守部のやつ……
エンジンカッターを持ち出してやがる」
「くっ……仕方ありません。ここはいったん引きましょう」
「……いいのか? 守部はお前の妹分なのに……」
「ああなってしまっては、おそらく私にも
説得は無理でしょうから……!」
辛そうに言う風見に、渡瀬はうなずいた。
だが歩き出そうとしたその時――
渡瀬の靴が鳴った。
「誰!?」
急速にエンジンカッターの駆動音が迫ってくる。
「い、いけません!」
「逃げるぞ橘!」
渡瀬と風見は、必死で通路を駆け出した。
そのまま施設内を逃げ惑う。
第3エリアに続く連絡通路に逃げ込み、
ゲートを閉めると、風見が怯えたように声を上げた。
「た、隊長……どこに逃げればいいのでしょう?」
「……守部がエンジンカッターを持ち出した以上、
どこかの部屋にたてこもっても無意味だ。ドアを破られちまう」
「しかし、どこか安全なところに逃げ込まなければ……」
※画像およびテキストは開発中のものです。 |